• 大橋しん

空間から与えられること

僕の通っていたトレーニング校が、ドイツのアレクサンダー講師の講座をお世話することがありました。


失礼がないように、お世話のチームは会議所で、絨毯敷きの大きな部屋を用意しました。


講座を終えて、その講師に部屋はどうだった?と尋ねました。




「いったいあの部屋はどこがよくて選んだの?」




みんなキョトンとしてしまったそうです。


僕はその場にいなかったのですが、その話を聞いて、何のことを言ったのか見当がつきました。



私達日本人の普通の感覚で講座に選ぶ部屋は、大抵会議室。


白い壁、クリーム色のパーテーション、石膏ボードの天井、開けられない窓ガラス。


そこにいるだけでワクワクする、とは思えない環境です。



僕は以前、自分のアメリカの先生を紹介して回っていたのですが、レンタル・スペースを検索してもそんな部屋ばかり出てくるので、しまいには自分で足を運んで探して回ったりして、六甲山に登ったり長野まで行ったりしました。


アメリカの先生もドイツの先生も、環境にこだわるからです。


音であっても、騒音だけでなく足音から床を気にしたり、壁の反射音が人の声とマッチしているか、冬にみんなが厚着してきても声が通る部屋なのか等、仔細に気を配ります。


それもすべて受講生のために。




どこにいるか。自分を取り巻く環境に、日本人はとりわけ疎いように思います。


というか、茶室や昔の和室を見るとそうでもない。日本だから、日本人だからというわけでもないと思います。


多文化の取り入れが、戦後だったからなのか、節操がなかったか、経済優先だったのか、実用優先だったのか、表面的だったのか。


今、自分を取り囲む環境が何でつくられた、どんなスペースだったか目を向けるのにとても疎くなっているな、と思います。



このことを思い出したのは、あるクライアントさんが


「あなたの教室、和室なのね。とっても落ち着く。子供の頃の気持ちになる」


と言われたからです。



実は、僕はちょっと前までスタジオって、つるっとして硬質な環境がそれっぽくて、自分の所は家庭環境みたいではずかしいかな…?と思っていました。


うちのレッスン・スペースは、麻のシェードを窓に引いた2つ通しの畳間なのです。


ピアノだけが置いてあって、必要なら治療台を出す。すっごいシンプルです。


ここで布団敷いて寝てるってすぐ分かる。でも、いいって言ってくれる人がいて嬉しいです。



自然とそういう部屋になったのですが、無意識で今までの経験から成っていったように思います。


オブジェをなぜ、ここに置くかも次第に気を向けるようになって、デザイナーやスタイリストがどういった視点を持っているのかも気がつくようになりました。


リラックスするって、空間がとっても関係していますね!だからこだわるというより、気を配る、という感じで空間をセッティングしています。



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アレクサンダー・テクニークの教師になるトレーニングには幾つかの重要課題があります。 そのうちの一つに「リーディング・フォローイング」というのがあります。 指導するとき、リードすることとついて行くことを同時にやる。 また、僕の師匠ブルース・ファートマンは理想の教育者のスタンスを、 「後ろから、囁き声で勇気づける」ように、 と、著書で言い表しています。 生徒の前から引っ張って先導するでもなし、後ろから