- 大橋しん
監獄クラブ「モーリッツ・バスタイ」に行く
ライプツィヒ大学の南側に元監獄を改修したお店「モーリッツ・バスタイ」があります。
クラブといっても昼からオープンし、地階にも吹き抜けのテラスがあって学生がたむろし、おしゃべりしたりゆっくりと読書をしていたりします。
バスタイは要塞の意味で、大学周辺の石畳一体は古代の町の要塞の名残です。
70年代に学生らによって発掘され、基金を設立して大学公認のクラブとして運営されるという面白い経緯を持つお店。
岩肌と補強レンガで囲まれたアリの巣のような複雜な構造で、スペースごとにイベントをしています。
一番大きなホールは100人収容くらいのライブハウスになっていて、ポップス・ジャズ・クラシックからモダンダンスなどのパフォーマンスが見られます。
ワイマールと同じでディプロマ(卒業)コンサートに使われる事が多く、その場合はフリー・ライブなので手にビールやコーヒーを持ってぶらぶらしながら音楽を聞いたり他の学生としゃべりに行ったり来たりします。
(少し後、2005年頃京都のアンデパンダンというアンダーグラウンドなライブハウスによく行きましたが、そこととてもよく似ていました)
モーリッツ・バスタイのざらついたアングラ感が気に入ってしょっちゅう行っていましたが、ある時イスラムの生徒とアジア人二人でビリヤードの勝負になりました。
僕はビリヤードなどしたことがほとんどなく、アラブの豪遊生活でビリヤードに慣れたハイタンとハサンが圧勝しました。
僕と組んだ中国人のファンも富裕層の息子で遊び慣れているのですが、僕と組むとなるとどうしようもない。
ファンは男前で周りに中国人の女の子を沢山連れていて、その子らが僕にもエールを送ってくれるのは嬉しいものでした。
勝負が終わるとファンは一緒に飲もうと言ってテーブルに着き、彼の中国での生活の話になり僕にフィアンセだと写真を見せてくれました。
どう見てもモデル!
その通りで彼は中国のモデルでタレントと付き合っており、恋しくて毎晩電話しているとのこと。
どうしてドイツに来たのかというと、案の定兵役をパスする手段として親から送り込まれたとのことです。
中国では選抜徴兵制度と志願兵制の混合で、年々志願兵の割合を増やし貧困層で兵数を確保する傾向が強まっているのですが、選抜はいわゆるくじ引きで誰もが当たることは当たるもので、ファンのような富裕層は海外留学で免除といった手を使う事ができるのです。
ファンは上海出身で日本は好きだそうで、本国でも日本を嫌悪しているのは年齢層の高い頑固な世代だから、中国と日本の若者は仲良くしたほうがいいと言います。
日本が好きな理由はドラゴンボールが大好きだから。あらゆるアニメを知っています。僕より知っている。
漫画やアニメは海外でとにかく人気があり、初対面で僕が日本人だと言うとどの国の人も必ずアニメの話をします。
アニメは世界平和の一端を担っている?
そうかもしれない。サッカーとアニメ、この2つで国際問題の半分は沈静化されているかもしれないくらい影響力があります。
ファンもサッカーは好きで、ライプツィヒにも中国人のサッカークラブがあり、そちらに加わっているとの事。
日本人のサッカークラブはあるのかな?野球のほうがありそうですが(後にフランクフルトやデュッセルドルフでは実際にある事を知った)、普段から日本人が集うほどこの町にいるわけでもなさそうだし…。
来年まであと2ヶ月、2002年日韓ワールドカップ、ドイツ人のサッカー愛!ナカタはみんな知っています。
僕は史上初の日本でのワールドカップの年を、熱狂のドイツで過ごすことになるのです。