- 大橋しん
イスラムの生徒の集まりに加わる
最終更新: 2020年8月15日
ドイツでイスラム信者の居住者は多くあちこちにムスクやケバップ屋、アラブ系の食料品店があります。
何となく、イスラマーの店っぽい雰囲気からそうでないと入ってはいけないように思えて入ったことがなかったのですが、クラスメートに連れられひとつのケバップ屋に入りました。
イスラムの生徒たちにコーラを奢ったことがきっかけで、彼らの食事会に誘われたのです。
食事会はとある学生寮の一部屋で行われるとのことでしたが、その前に食品を調達しに行くから、とそのケバップ屋に寄ったのです。
青いタイルのきれいな内装のケバップ屋です。
ケバップとはアラブのサンドイッチで、1mくらいの棒に鶏肉や牛肉を重ねて刺したシンボリックな肉塊が店頭にあります。
回りながら焼かれているそれをこそいで、ピタパンに野菜と一緒にモリモリに挟んで食べます。
ボリュームがあるのに300円くらいなので、友人とよくスタンドで買って歩きながら食べました。
クラスメート達は「サラーム」と言ってその店の店主に挨拶すると彼は「おう」と顎を振り、クラスメートらは裏口から食料品を次々運び始めました。
店主が家族?そう思いましたがやりとりではどうもそうではないようで、これは彼らの間で日常的な事みたいです。
一人ずつ食料品を詰めたダンボールを持って「サラーム」と言って店を出て、学生寮に向かいました。
部屋に入ると沢山の20歳前後のアラブ系の男の子たちがいて、「よく来たね!」と歓待してくれました。
10人はいると思いますが、別の部屋にもいて次々に出入りするので誰が誰だかもう分かりません。テーブルに食料品を置き、僕に飲み物とスナックを勧めてくれます。
どうも僕がピザハットでコーラを奢った話は周りに伝わっているようで、とてもよくしてくれます。日本の事を尋ねられ、特にアニメや武道に興味があるとのことです。
みんなドラゴンボールや北斗の拳が大好き。ポケモンやドラえもんのこともちょっと出てきましたが、男の子たちばかりなので格闘モノ、それとなんと言ってもキャプテン翼の人気がすごいようです。
モロッコではサッカーがとにかく人気で、日中は暑すぎてできたものではないので、夜になると子どもたちはサッカーをしに外に出てくるとの事です。
あと空手と柔道が盛んなようで、僕に後ろ回し蹴り、上段構え、など知っている事を言ってきます。これらはもと植民地のフランスの影響のようです。
習っていた子が空手の型を披露し始めました。彼らは押しなべて体つきがよく、細身でもがっしりとしているので迫力があります。
僕は思いついて、お返しのようにブルース・リーの真似事をしてみました。以前、ドラムをやっていた友人とからだを素早く動かすコツを得ようと、ブルース・リーのマネをしていたことがあったのです。
「はやい!」「柔らかくて鋭い!」と予想外にも大受けし、「どうやってる?」と質問攻めになりました。
楽しく過ごして夜もすっかり遅くなり帰りとなりましたが、「また来いよ!」とすっかり受け入れられた様子で、にぎやかなアパートを出ると寒空に一人で中央駅に向かいました。
後日色々分かってきたのですが、イスラマーは自分たちのコミュニティをつくり、お互い助け合って暮らしているのです。
ケバップ屋で食料品を大量に持ち去られてもケバップ屋は平然としていました。おそらく仕入れなど自分の手持ちでしているわけではなく、イスラムのコミュニティからの供給なのでしょう。
店に出入りしているアラブ系の人で払わなかったりする人がいるのも後々目撃していますから、その店の店主はコミュニティの食堂担当、といった感じなのでしょうか。
あと、部屋にいた若者の多くは住居不定で、一人が寮を借りれると家賃を浮かそうと入れるだけ入ってきてしまいます。
ドイツ人には露骨にアラブ系を嫌う人もいるのですが、理由を聞くと「経済バランスが狂うから出ていってほしい」と言います。
人種差別には反対でも嫌うのはそれなりに理由もあるようで、その原因の彼らのコミュニティ運営も、マイノリティへの厳しい仕組みに対する生きる知恵なのだと思います。僕が知ったのは一部で、もっと大胆なこともしているのでしょう。
日本は?日本人は?
僕はこのドイツ滞在後帰国し、日本人が基本的に差別体質なのをとても感じるようになったのですが、以前は全然気付かないこともそう察するようになりました。
僕には、多くの日本人は生活レベルで自分と違うものに対し徹底して不寛容に見えるのですが、格好と表現は多様化し差別反対と声高に憤っていたりしてその気付かなさゆえのギャップは結構なものです。
おそらくこの普通に根づいている差別意識は、一旦日本から離れないと気付くのが難しいと思います。
でも人にツッコミを入れるのは簡単、まず自分の表現に注意しようと思っているのですが、僕も気付いていないところがあるのだといつも念頭に置いています。