• 大橋しん

コーラを奢って後悔する

最終更新: 8月25日

郊外研修の帰りにクラスメートと町中でぶらぶらする機会がありました。


中国の子らとモロッコなどアラブの子らは人数が多く、普段は仲間と連れ立っているのであまり一緒に遊ぶ事がなかったのですが、このときの混合グループは珍しいメンツだったので、みんな何となくウキウキしているように見えました。


中央駅の地下で中国の子らが「お腹すいた」、といって唐突にピザハットのカウンターに並びました。


アラブの子たちは途端に険しい表情になり、僕もアラブの子たちと一緒に店の前で中国の子たちが注文するのを見ていました。



20年前の当時、まだ中国は経済台頭する前で、聞くとドイツに留学してくる中国の子らは富豪の子たちばかりでした。


お店に入る前に、一言「ココ入らない?」と声掛けでもあればよかったのですが、好きなように動くことに慣れているようで不意のことに唖然としてしまいました。


しかしアラブの子らは、僕とは違う理由で緊張感を持ったようでした。



中国の子らはピザとドリンクを持ってスタンドで食べ始めました。僕は気まずい空気を何とかしようと、「ちょっと待ってて」とアラブの子たちに言ってカウンターに行き、僕とアラブの子ら4人のコーラを頼みました。


中国の子らの横のスタンドにそれを置いて、アラブの子らに「どうぞ」と言って呼びました。


喜ぶかと思ったのですが彼らは「なんてことするんだ!」とつぶやきました。



でも、僕の気持ちも察したのか、肩を落として僕のところに加わり、「ありがとう」と言いました。


僕はまずい気持ちになりましたが、どこがまずかったのかいまいち分かりませんでした。


豚肉がダメでピザはリスクがあるのは分かっていたので、あえてコーラだけにしてうまくやったつもりだったのに…。



テーブルで、ある子が言いました。


「このコーラは400円もする。これはモロッコの漁師の日給くらいだよ。君がそれをあっさりいくつも買った。僕らにとっては贅沢すぎてもったいない気持ちとくやしい気持ちになる」


「僕らも本国ではかなり裕福な方で、そうでないとドイツに留学なんてできない。モロッコでは子供をヨーロッパに留学させて仕送りさせると、生活がとても楽になるので何とかこちらに留まれるように勉強するんだ。贅沢はできない」


「でも本当は君がしたことに感動している。今度僕らの集まりで食事をごちそうしたいから、ぜひおいでよ」


他の子らもうなずいて、僕はイスラムの食事会の集まりに行く約束をしました。



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