
大橋しん
アニオタではなくレースクィーン
更新日:2020年8月25日
ドイツ語学校も慣れてくるとドイツ人との交流は先生くらいなもので、現地の人と話したくなります。
その方がドイツ語早く上達するよ!とクラスメートが言うもので、ドイツ語を勉強するモチベーションがさほどなかった僕もなんとなくあおられて、タンデムパートナーに興味を持ちました。
タンデムパートナーとは大学が推薦する語学交換プログラムの一種で、例えばドイツ語を学びたい日本人と日本語を学びたいドイツ人をカップリングするようなシステムです。
システムといっても掲示板があったり人づてに紹介してもらうような簡単でラフなもので、僕のケースも
「空いてる日本人探してるドイツ人の女の子がいるんだけど…」
と知人に声をかけられ、唐突に機会が回ってきたのでした。
さて、どんな人か会ってみるまでわかりません。気軽に受けたものの…
「おいおいやべーぞ。日本人を当たるドイツ女はださださアニメオタクに決まってんぞ」
となりのクラスで一緒につるむようになったウズベク人のバブアーがニヤニヤしながらそう言います。
「面白いから見に行こうぜ」
ウクライナ人のサーシャもそう言って、結局待ち合わせ場所のメンザ(学生カフェ)にふたりともついてきてしまいました。
ひとつ隔てたテーブルから
「絶対デブだぜ」
「そばかすだらけの醜いキモオタだろう」
などという茶化しを受けながら待っていましたが、約束の時間になってもそれらしき女性は現れません。
15分は経って、ふたりがなんだ面白くねえの、と飽き始めました。
すると、急いで入ってきたグラマーかつノーブルな金髪の女性がキョロキョロしだしました。
「おいおいまさか…」とふたりがつぶやくと、その女性は僕のところにまっすぐやってきて、
「ごめんなさい。あなたがシン?」
「そう。アンヤ・ウェーバー?はじめまして。」
彼女が僕のテーブルに座り、隣を見るとふたりとも口が開いたまま固まっているのでした。