
大橋しん
圧倒的人気はスウェーデンの女性
更新日:2020年8月25日
ホテルから学生寮に移り、ミキさんと合流し郊外の路面電車に乗ってIKEAに向かいました。
ドイツも日本と同じで大型店は郊外にあります。路面電車は町の中央から住宅街を抜け、家がまばらになってサイロの立つ田園風景なっていきます。
路面電車に乗っているとドイツの町の成り立ちがよく分かります。町中は6階建てくらいのアパートが多く、簡素で暗い。時々アールヌーボーの建物があったり派手な看板があったりしますが、元東ドイツで2番めに大きかったこの町は、それが信じられないくらい地味です。
ところどころにある廃墟化した工場がこれまた街の印象を暗くしています。それらはドイツ統一で廃業した東時代の製造業跡で、再開発する目処も立たずそのまま放置されているようです。郊外は野原か畑。
日本にいるとドイツはヨーロッパでも近代的で経済は安定した印象で語られることが多いのですが、ここ東エリアの失業率は18%と高く、人々の生活はそれほど安定しているわけでもなさそうです。
そして表情が暗い。2日に1日は曇りまたは雨、というのも関係しているのかもしれません。
隣りに座るミキさんは小柄なのに明るい表情をしているので目立ちます。日本人女性に人気があるのはいくつか理由がありますが、まずこの表情があるのかな、と思います。
ドイツで会った日本人女性は大抵(おそらく日本にいるときより)オープン・マインドで、悲壮感と厳しさを宿らせた東ヨーロッパ人特有の顔とはパッと見印象がぜんぜん違って、健康かつ魅力的に見えます。
ラテン系の女性も明るいので周りから愛されるのですが押しが強く、寡黙で真面目なドイツ人男性とはマッチしづらい。
聞いた限りではヨーロッパ人男性にとってはスウェーデンの女性が圧倒的に人気があるとか。華奢でストレートのロングヘア、傘に長靴で寝起きみたいなぼんやりした目で妖精みたいに雨の中をふわふわフラフラ、こんな印象が典型的ですが、なんとなく分かるような。
スウェーデンの女性が別格だとすると次が日本人女性、そのくらい人気があります。共通点は肌が繊細できれいなこと、内気なこと、でしょうか。
ちなみに残念ながら日本人男性は全然人気がありません。出っ歯でメガネ、吊り目の印象。
こんな事を書くのも、こうやって人種別に見る・見られることで、相手にとって自分が何者であるか、日本ではないレベルで考えたり気付いたりしたのを思い出すからです。
自分が何者か、それを相手の印象から知ったら、自分のどこにアイデンティティを見いだすことができるのか、今まで向けなかった所に注意を向けることになります。
自分が何に属していて、そこから逃れられず、それを抱えて生きる。生き方は変えられるけど、抱えているものは勝手に下ろすことができない。
しかしそれを受け入れると、自分の好きではなかった顔や存在や振る舞いが何となく許せるような気になっていきます。
以前書いたのですが、日本がダサい、日本が嫌いで、自分の事もいっぱい嫌いな所があったのですが、帰国する頃には日本(国というより文化)も自分も好きになっていました。
そう気付くのも後々の事で、その時はIKEAに向かっているだけです。今では日本にIKEAが上陸して随分おなじみになり、同じような戦略で展開する起業も増えたので珍しくも何ともありませんが、20年前のIKEA初体験は僕には結構なインパクトでした。
フィンランド、オシャレ。ドイツ、クール。日本、やっぱり世界の田舎。
IKEAから生活雑貨を抱えて町の中央に帰ってくるときは、ようやくヨーロッパに入り込んだような気分になっていました。
やっぱり田舎者。コンプレックス。