
大橋しん
自然は基本、人の手が加えられている
ワイマールの滞在はビザなしの3ヶ月が限度なので、長期滞在のために準備のし直しに一旦帰国することにしました。
今思うと何ともアバウトな行動ですね。20代前半、明日の宿もメシも考えず怖いものなしで行動できたのは振り返ってみてもどんな心境だったのか思い出せません。
ただ、未来に対して怖いものが一切なかったことだけは憶えています。
さて、学生寮を引き払う準備をしつつチェロの練習の合間に散歩。
ワイマールの景色はおそらくドイツの田舎の典型的なものでしょう。日本の田舎と全然違います。
まず、山が違う。というか山がない。というか山なのか丘なのか分からない。
日本の田舎は視界にほぼ必ず山があります。どの山も「あの山」と指させるくらいはっきりと平野と区別できます。
一方、ドイツはなだらかな丘がランダムに続き、山には見えない。その丘はみっちりと畑です。何の畑かは分からない。
自然の土地がない。調べてみると中世に開墾し尽くして、自然木などないんだそうです。
目に見える自然は基本、人の手が加えられている。そんな事考えたこともありませんでした。
ということは、ドイツ人にとって、広くはヨーロッパ人にとっての「自然」とは僕らとはかなり違うものかもしれない。
欧米の「ナチュラル」には、もう人の手にかかっている。ナチュラルには土臭さすらないのが前提。
そういったぼんやりした気づきは、やがて僕が後々する、人の中の野生を呼び戻すサポート活動と繋がっていったのかもしれません。
その軸は「アレクサンダー・テクニーク」という、妙な名前のアイデアによって形成されてゆくのでした。