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  • 大橋しん

強制収容所へ行ってみる(1)

飛び込みでドイツ生活を始めましたが、大阪の先生に紹介されたチェロの先生は、リスト音楽大学の准教授に当たる新進気鋭の若手で、僕がわざわざ日本からやってきたのをどう受け取ったかは分かりません。


とにかく僕は毎週リスト音楽大学に通い、彼の指導を受けながら、残りの時間はワイマールをぶらぶらして過ごしました。


念願の日本脱出で新鮮な気分でした。町をうろついてもドイツにはそこそこ外国人が流入していて、アジア人でも特に目立ちません。誰もが僕を放っておく、という状況はとても気が楽でした。


自転車はドイツでは高価なもので(最低モデルで10万円)、購入は諦め石畳の美しいワイマールをくまなく歩いて周り、お店を覗いたり、何かわからない軽食を試しに買って食べたり、本屋で立ち読みしたりして過ごしました。


まもなく音楽大学の掲示板に気が付き、ディプロマ(卒業証明)のために学生が無料でコンサートをしょっちゅう開いているのが分かったので、片っぱしから聴いてまわりました。


学生と言っても音楽大学のレベルが高いので、どの演奏もかなりの水準で、それでも演奏家として生き残るのはかなり難しいと聴きましたが、とにかく無料で浴びるほど演奏を聴ける日々を大いに楽しみました。


ワイマールは小さな田舎町なので、まもなく町なかを全部見て回ってしまい、バスで郊外に出かけるようになりました。


町のはるか向こうの丘にずんぐりした塔があるのがずっと見えていて、気になってきたのでノリコさんに何かと尋ねると、


「ブーヘンヴァルト。強制収容所があった所ですよ。」


と教えてくれました。


その途端、この町のいつも漂う重さ、小さな田舎町なのに、なんとなくピリっとしている感じ、それの正体を見た気がして、そこがますます気になってきました。




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